キリスト教の真実―西洋近代をもたらした宗教思想 (ちくま新書)
- 作者: 竹下節子
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2012/04
- メディア: 新書
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いい加減な内容のキリスト教批判本はたくさんありますが、この竹下節子氏の本は学問的な批判に耐えうる、しっかりとした内容であり主張であると思います。
カトリック史とエゾテリズム(秘教)史の研究者ですから、そちらの視点からの見方ではありますが、だからこそ、正統的キリスト教を自認する人たちに、一読をおすすめします。
宗教、とりわけ一神教、とりわけキリスト教、とりわけプロテスタント、とりわけ正統主義、とりわけ福音主義、とりわけ根本主義は、そもそも「独善的」な性格を持っています。
「自分たちこそ正しい教えを保持し、唯一の救いの道を保持しており、他は間違っている」。
そのように理解しているからこそ、宣教や教育に熱心になるのでしょう。
ヨハネによる福音書において、イエス・キリストはこう言っています。
「わたしが道であり、真理であり、いのちです。わたしを通らなければ、誰も父のもとに行くことはできません」(14:6)
多元主義・相対主義が支配的な世にあっても、福音主義のキリスト者は堂々と、この唯一の救いの道を信じ、告白し、伝えたら良いでしょう。
ただし、この世の基準ではそれが「独善的」な言動であることを自覚している必要があります。
なぜなら、この世には「他」にも「独善的」な宗教者や無宗教者がいるため、その自覚が無ければ、衝突を繰り返すばかりだからです。
自らの信じる神に対する絶対的な確信を保持しつつ、他の宗教者や無宗教者の尊厳を認めて、互いに受け入れ合い、共に平和の実現をめざす。
これが今日必要とされるキリスト者のあり方ではないでしょうか。
現代のキリスト教は普遍性を持ちうるものでしょうか?
この本の著者は重要な問題提起をしています!