KANAISM BLOG ー真っ直ぐに行こうー

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人の義と神の愛(ヨナ4:1-11)

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ピーテル・ラストマン「ヨナと大魚」

■聖書朗読  ヨナ書4:1~11(新共同訳)


1 ヨナにとって、このことは大いに不満であり、彼は怒った。2 彼は、主に訴えた。
「ああ、主よ、わたしがまだ国にいましたとき、言ったとおりではありませんか。だから、わたしは先にタルシシュに向かって逃げたのです。わたしには、こうなることが分かっていました。あなたは、恵みと憐れみの神であり、忍耐深く、慈しみに富み、災いをくだそうとしても思い直される方です。3 主よどうか今、わたしの命を取ってください。生きているよりも死ぬ方がましです」
4 主は言われた。
「お前は怒るが、それは正しいことか」
5 そこで、ヨナは都を出て東の方に座り込んだ。そして、そこに小屋を建て、日射しを避けてその中に座り、都に何が起こるかを見届けようとした。
6 すると、主なる神は彼の苦痛を救うため、とうごまの木に命じて芽を出させられた。とうごまの木は伸びてヨナよりも丈が高くなり、頭の上に陰をつくったので、ヨナの不満は消え、このとうごまの木を大いに喜んだ。7 ところが翌日の明け方、神は虫に命じて木に登らせ、とうごまの木を食い荒らさせられたので木は枯れてしまった。8 日が昇ると、神は今度は焼けつくような東風に吹きつけるよう命じられた。太陽もヨナの頭上に照りつけたので、ヨナはぐったりとなり、死ぬことを願って言った。
「生きているよりも、死ぬ方がましです」
9  神はヨナに言われた。
「お前はとうごまの木のことで怒るが、それは正しいことか」
彼は言った。
「もちろんです。怒りのあまり死にたいくらいです」
10 すると、主はこう言われた。
「お前は、自分で労することも育てることもなく、一夜にして生じ、一夜にして滅びたこのとうごまの木さえ惜しんでいる。11 それならば、どうしてわたしが、この大いなる都ニネベを惜しまずにいられるだろうか。そこには、十二万人以上の右も左もわきまえぬ人間と、無数の家畜がいるのだから」


■説教要旨

 

アッシリア王国の首都ニネベの人々が悔い改めて、神による処罰を免れたことについて、ヨナは非常に不満であり、彼は怒りを神=主にぶつけました。ヨナにとってアッシリアは祖国イスラエルを脅かす敵国であり、ヨナはニネベの人々の悪行を憎んでいました。ヨナはニネベの滅亡を望んでいたのです。実際その後アッシリアは強大になり、前722年に北王国イスラエルを滅ぼすことになります(列王記下17:6)。

 

ニネベに関するヨナの考え・感情・態度は間違っていたのでしょうか。それは悪かったのでしょうか。主がヨナに「それは正しいことか」(4:4)と言って、彼を責めたのは、なぜでしょうか。

 

 ヨナが自分の民族・自分の国――とりわけ真の神である主に500年以上も命がけで従ってきたイスラエル――に対して特別な愛情を持つのは、当然です。主を恐れずに悪を重ね、イスラエルを脅かす敵国を滅ぼしてほしい、と彼が願うのも当然です。しかし、主が恵み深く憐れみに富んだお方であるがゆえに、ニネベの人々が悔い改めるならば、主は彼らをお赦しになる。そのこともヨナは予想していました。「これに呼びかけよ」とのご命令、どうしたものか。

 

ヨナはこの矛盾と葛藤に耐え切れず、〈主から逃れようとして〉逆方向の地中海へ向かいました。その深い海にバプタイズされて、彼は己の死を体験しました。主が〈陰府の底〉〈滅びの穴から引き上げてくださった〉。生きるも死ぬも何もかも、私のすべては主の御手のうちにある――。

 

魚の腹から吐き出されたヨナは〈主の命令どおり〉ニネベに行って、主の言葉を人々に告げました。すると予想どおり、ニネベの人々は悔い改めて悪の道を離れ、神は思い直して、災いを下すことを中止されました。

 

すると、ヨナは怒りが込み上げてきてしまったのです。主が為さることは、すべて正しい。けれども自分は納得できない。この現実を呑み込めない。もう「生きているより死ぬ方がましです」と、ヨナは主に訴えました。

 

ヨナは都を出て、東の方に小屋を建て、その中に座って町の様子をうかがいました。そこは灼熱の太陽が照らす酷暑の地です。〈主は彼の苦痛を救うため、唐胡麻の木に命じて芽を出させ……彼の頭の上に陰を作りました〉。唐胡麻にはつる状の茎と大きな葉があり、数日のうちに大きく生長して、日陰を作ることができます。しかし茎が損傷すると、すぐに枯れてしまいます。

 

〈翌日の明け方、神が虫に命じて木に登らせ、唐胡麻の木を食い荒らさせたので、木は枯れてしまいました〉。日が昇ると、神は焼けつくような東風を吹かせました。これは砂漠からの熱気を伴った季節風です。ヨナは弱り果てて、再びこう言いました。「生きているよりも、死ぬ方がましです」。

 

主はヨナを諭しました。「お前は、自分で労することも育てることもなく、一夜にして生じ、一夜にして滅びたこの唐胡麻の木さえ惜しんでいる。それならば、どうしてわたしが、この大いなる都ニネベを惜しまずにいられるだろうか。そこには12万人以上の右も左もわきまえぬ人間と、無数の家畜がいるのだから」。

 

ヨナ書は、神に選ばれた民が陥りやすい特権意識と差別について、警告しています。

神は、すべての人々が救われて真理を知るようになることを、望んでおられます。(第一テモテ2:4)。

ある人たちは、遅いと考えているようですが、主は約束の実現を遅らせておられるのではありません。そうではなく、一人も滅びないで皆が悔い改めるようにと、あなたがたのために忍耐しておられるのです。(第二ペトロ3:9)

私たちは、隣人に対する主の思いを、理解しているでしょうか。主のご意思にかなった言動をしているでしょうか。