自民圧勝、日本の政治はどこへ行く?
12月16日に行われた総選挙では、自民党が294議席を獲得して、圧勝した。政権は民主党から自民党に移り、第二次安倍内閣が発足することとなった。重要な節目となったこの選挙の意味と今後の日本政治の展望について考察する。
1.国防・領土・外交問題
なぜ自民党が勝ったのか。
その最大の要因は「与党となった民主党が国民の期待を裏切ったから」だろう。自民党以外選択肢が無いと考える有権者が多かったのだ。
もう一つ、領土問題や北朝鮮のミサイル問題など、東アジアの安全保障が危機的な状況になったことも大きく影響している。総選挙を間近にして、反日デモ、尖閣、竹島、ミサイルなど、東アジアでこれだけいろいろな事件が起こったら、日本の政治が右傾化するのは、当然だろう。
中国では長年、反日教育を続けてきたために、国内の不満分子が暴発しがちであり、彼らのエネルギ—を中国政府は持て余している。
中国には太平洋に出て、海洋国家とならなければならない事情がある。人口の増大と経済成長のために、食糧や鉱物資源などを輸入し、製品を輸出しなければならないのだ。
中国の動向が今後も日本の政治に大きな影響を及ぼすのは、間違いない。
2.小選挙区制の問題
今回の選挙では小選挙区制の問題が如実に表れた。まず、このデータに注目したい。
【小選挙区】全300議席
【合計】全480議席
【死票率】
自民党 12.9%
民主党 82.5%
全 体 56.0% 約3730万票
(小選挙区で落選候補に投じられ、有権者の投票行動が議席獲得に結びつかなかった票の割合)
自民党は、小選挙区で237議席、比例代表で57議席、合わせて294議席を獲得して圧勝、衆議院の6割強を占めることとなった。ただし、自民党が比例代表では得票率が3割しかないということを忘れてはならない。小選挙区制が導入された時から、このような日が来ることを予想していたけれど、いよいよ現実となってしまった。
政治はバランスが大切だ。この選挙制度と今回の結果はバランスが悪すぎる。現行の小選挙区比例代表並立制では、民意が正確に議席数に反映されているとは言えない。やはり中選挙区制にするべきではないか。小選挙区比例代表並立制を続けるのなら、せめて小選挙区と比例代表の議席数を同数にすべきだろう。
「自民党が万年与党で、社会党が万年野党第一党と固定化した55年体制を打ち壊して、アメリカ型の二大政党政治を実現したい」。これが、小沢氏が自民党を飛び出して以来、一貫して追い求めてきたビジョンだった。小選挙区制は、それを実現するための仕掛けだった。
しかし、現在の日本の政治家には、極右派(タカ派)、保守派、中道リベラル派(ハト派)、社会民主主義者、共産主義者の5種類の人たちがいる。しかも、自民党には前3つ、民主党には前4つの種類の人たちが混在している。このような状況で、二大勢力にまとまるわけがない。
日本の政治には、やはり独特の中選挙区制がふさわしい。選挙制度を変えて、すっきりと、国民にわかりやすい形に政界を再編すべきだろう!
今回、落選した大物代議士には、自民党から出馬してもおかしくない顔ぶれが多い。
民主党がなぜ負けたのか。マニフェストで約束した政策の多くを、実行しなかったこと、「しない」と言っていた消費税増税をしたこと、原発事故への対応のまずさなど、いくつもの原因をあげることができるだろう。だが、最大の、根本的な問題は、民主党が自民党と大した違いの無いものだ、ということが国民にわかってしまったからではないか。
誠実で、実行力のある、本物のリベラル派を求めている有権者が多くいるのに、その票の受け皿となる政党が無い。そのような人たちは、今回の総選挙で、どこに入れたら良いものか、と困ってしまった。これが現在の最大の問題ではないか!
ある政党では、支持母体の団体のメンバーが100パーセント近く投票に行く。たとえば、投票率が50%とすると、そのメンバーは一人で2票持っているのと同じだ。だから、自民党はその政党を大切にしてきた。今回、その政党は単独候補を立てた9小選挙区で全勝して、議席を増やした。しかし、ここまで自民党が大勝すると、今後もその政党を大切にするだろうか? 本来、政策的には民主党に近い中道リベラル派の党だ。
今後は党派を超えて、リベラル派が結集する政界再編を進めるべきだ! ここしばらく与党時代にあぐらをかいていた人たちに、もう一度、危機感を持って動いてもらいたい!
4.憲法「改悪」?
【参考】http://www.geocities.jp/le_grand_concierge2/_geo_contents_/JaakuAmerika2/Jiminkenpo2012.htm
この自民党の改憲案について、新聞やオピニオン誌、テレビの報道番組などがもっと綿密に伝えて、テレビやネットなどできっちりと議論すべきだった。今回の総選挙の投票率は59%で、戦後最低水準であったが、これを見ても明らかなように、国民の多数は事の重大性を十分に理解しているとは言えない。
自民党は比例代表の得票率が3割しかない。この選挙で改憲案が支持されたと考えるべきではない!!
マスコミはこれからでも、しっかりとこの問題に取り組むべきだ。
「自由」で「民主」的な憲法を守って、平和な世界を築こう!!
5.女性の活躍を期待する
政治や行政は、方向性・政策と共に、人的バランスも重要だ。世代間のバランスだけでなく、男女のバランスも重要なものだ。人は、自分の育った環境や現在の立場に大きく影響されて、物事を考え、選択し、行動するからだ。
欧米諸国では、子どもを持つ女性たちが、国政において重要なポストを担っている。母親は、子どもの将来のことまで心配して、考える。日本の政治は、このバランスにおいて、どうだろうか?
発想を柔らかくするために、ちょっと極端に考えてみるのも、良いかもしれない。
たとえば、世界中のすべての国に、「国会議員の半数を男性とし、半数を女性とする」という規定があって、それが実行されたら、どうなるか? 税金の使い方も、街の造り方も、発電の方法も、働き方や休み方も、軍隊の動かし方も、いろいろ変わっていくのではないか!?
とにかく若い人たちは、選挙に行かないと、大損をする!! 既得権益、利益の分配に関して言えば、老年党 vs 若年党 、非IT党 vs IT党 に分かれて選挙をした方がいいくらい、世代間の格差がすっごいことになっているからだ。