KANAISM BLOG ー真っ直ぐに行こうー

聖書のメッセージやキリスト教の論説、社会評論などを書いています。

今、日本の政治を考える(1)

  1.政治という作業

政治
行政というものは、日々緊迫した問題が次々に発生する国際社会と国内社会の現実に向き合って、様々なファクターを考慮し計算し連絡・調整・協議を重ねて決断を下し、問題を処理していく仕事です。

白か黒か、賛成か反対か、正か誤か、然りか否か、判別するのが難しい問題ばかりですが、その判別をしていく作業が政治なのです。

有権者選挙においてその難しい作業を行い、議会は法律や条例の制定改廃においてその難しい作業を行い、内閣を頂点とする行政機関は実務においてその難しい作業を行っています。


ジャーナリズムは、それらの作業に対して大きな影響力を持っています。ジャーナリズムの責任は大きなものです。


現政権を批判する側は、代替(alternative と成り得る具体的なポリシーを提示すべきです。あるいは、こんな良い政策を持っている人がいる、という紹介でも結構です。
それができなければ、その人たちの批判は「無責任」のそしりを免れません。かつて旧社会党は「牛歩」で、その無責任体質が露見し、国民からほとんど支持を失ってしまいました。

 

  2.選挙の意義

 

現代の世界は、グローバル化しており、かつ、非常に複雑にシステム化して専門分化が進んでいるため、個人が認識できる「世界」は、そのわずかな部分でしか有りえません。「現代世界は…」とか「現代日本人は…」という定義付けが難しい時代です。個人が語るのはせいぜい、真実の一断面に過ぎません。「多様化」とか「多元化」というのは、その定義しがたき世界を定義する、言い訳のような用語です。

 

マスメディアインターネットなどによって大量の情報を得ることはできますが、それらの情報とて真偽が不確かなものです。意図的な情報操作がいくらでも可能です。

 

だからこそ、「選挙」という方法によって、それぞれの「生きる場」を持つ国民=有権者が平等に一票を投じて自らの意思を表し、多様な民意を集約して、社会的な合意形成を図ることが、より重要になっています。

選挙は一種の権力闘争であり、「勝てば官軍、負ければ賊軍」という現実が無いわけではありません。しかし、敗軍であっても、その得た票数民意の反映であって、与党=政府の政策にそれなりの影響を与えます。有権者投票さえしないのなら、与党=政府はやりたい放題となります。

 

  3.福音派の政治的活動の問題

 

政治的選択においては、考えるべきファクターがたくさんあり、迷って悩むのが当然です。選挙の争点は一つや二つではないですから。

それなのに、「与党に投票するのは、クリスチャンじゃない」と言うに等しい運動をしている人たちが、日本の福音派の中枢を占めているようです。

迷って悩む作業の過程をすっ飛ばして、単純なプロパガンダによって民衆を思いのままに誘導する。そのような思考の停止奴隷的服従こそ、ファシズムの根本だということを知りながら、そんなことをしているのでしょうか?

 

もしかしたら、信教の自由を訴えている人たちは、自分たちの信仰の自由を主張しているだけで、異なる信仰や主義主張を持つ人たちの自由に関しては無関心あるいは非寛容だったりするのではないでしょうか。

 

福音主義を自称する人たちは、正統的であることを自認しており、自分たちの主義主張を絶対視しがちです。しかし、自分たちの信じている神が絶対者であり、聖書が唯一の絶対的な真理の基準であっても、その神を信じ、聖書を読解する者自身は相対的で不確かです。誰も、誤りのない唯一の完全な解釈者には、なれません。この考え方はプロテスタントの根本であるはずです。

  4.自分の頭で考える

 

私たちは日常的に、様々なものによってマインドコントロールを受けています。マインドコントロールと言うと、何か特別なことのように思うかもしれません。しかし、それは、家庭生活や学校教育、教会教育など様々な場で、講義、書籍、マンガ、流行歌、雑誌、新聞、ゲーム、テレビ、ビデオ、インターネットなど、ごくありふれたメディアによって私たちの中に忍び込み、影響を与えています。

マインドコントロール
洗脳解くために重要な作業は、多角的に複数の見方を学び、自分の頭で考えることです。

たとえば、以下のような設問について、考えてみてはいかがでしょうか。


  A.歴史認識
【A-1】アジア太平洋戦争(大東亜戦争)は、全面的に侵略戦争だったのですか?
【A-2】日本がアジア・太平洋の諸国・諸地域において行った戦争は、国際法上、犯罪ですか?
【A-3】戦争において戦闘員が敵国の戦闘員を攻撃し、殺害することは、国際法上、犯罪ですか?
【A-4】旧日本軍が慰安婦を集めた施設を設置し、運営したことは、犯罪ですか?
【A-5】旧日本軍が直接、強制的に拉致して慰安婦にした朝鮮人の女性は何人いましたか? 実名が明らかになっている元朝鮮人慰安婦で、軍隊による拉致の事実が証明された人はいますか?
【A-6】軍隊が慰安婦あるいはそれに類するものを集めた施設を設置・運営したのは、旧日本軍だけですか? 歴史を通じて現代に至るまで、他の軍隊には無かったのでしょうか?
【A-7】韓国は、国内ばかりか米国にまで従軍慰安婦の少女の像を設置しており、「日本帝国軍によって強制的に性奴隷状態(sexual slavery)にされたアジアとオランダの女性が200,000人以上いた」と碑文に書き残しています。これは事実でしょうか? この行為をどう思いますか?
【A-8】開戦の後に作られたルール=事後法によって、戦争責任を問うた極東軍事裁判(東京裁判)は、国際法上、正当な裁判でしたか?
【A-9】米軍が太平洋戦争において日本の各地で行った空爆や原爆投下、沖縄地上戦などによって、非戦闘員である民間人が無差別に何十万人も大量虐殺されました。これは国際法に違反する戦争犯罪ではありませんか?
A-10】太平洋戦争の末期に、ソ連軍が日ソ中立条約を一方的に破棄して、満州樺太千島列島に侵攻し、大勢の日本の民間人と軍人を殺害しました。そして、約65万人の日本軍人を捕虜として、シベリアの収容所で劣悪な環境の中、数年にわたって抑留しました。その他にも数十万人の日本人が終戦後、ソ連の各地に送られ、強制労働をさせられて、そこで死んでいます(ウイリアム・ニンモ著『検証-シベリア抑留』)。これは国際法に違反する戦争犯罪ではありませんか?

  B.安全保障

【B-1】中国は、国家予算の10パーセント以上を軍事費にあてて、急速に軍備拡張を進めています。中国は東シナ海南シナ海で外国の領土・領海・領空を侵犯したり、超高速ミサイルの発射実験を行ったりして、近隣諸国への軍事的プレシャーを強めています。日本は、これにどのように対処すべきでしょうか?
【B-2】北朝鮮には、よく知られているように多くの問題があります。北朝鮮は貧困にも関わらず、膨大な国家予算を費やして、核兵器とミサイルの開発をどんどん進めており、韓国・日本・米国などへの軍事的プレッシャーを強めています。日本人をはじめ世界中から驚くほど多くの人が、北朝鮮に拉致されています。日本人拉致被害者を救出するために、日本の政治はどうしたら良いのでしょうか? 
【B-3】自衛隊は不要ですか?
【B-4】沖縄の駐留米軍は不要ですか?
【B-5】日米安保条約=日米同盟は不要ですか?
【B-6】集団的自衛権を日本国が持つことは、国際法上、不法ですか?
【B-7】集団的自衛権の限定的な行使は、日本に関して不要ですか?
【B-8】特定秘密保護法は不要ですか?
【B-9】「戦前と同じような道を、現政権は再び進んでいる」というのは本当ですか? その根拠は何ですか?
【B-10】戦前と現代の、国際的また国内的な政治のシステムや状況は、「同じ」といえる程に近似したものですか?


  C.政治体制

【C-1】国旗や国歌は不要ですか?
【C-2】日の丸の掲揚や君が代の斉唱・演奏は、聖書が禁じる偶像崇拝ですか?
【C-3】日の丸・君が代よりもふさわしいと思われる国旗・国歌の候補がありますか? それは何ですか?
【C-4】天皇制は聖書が禁じているものですか?
【C-5】天皇制は不要ですか? 日本国憲法第一条から第八条までは改廃すべきですか?
【C-6】天皇制を廃止して共和制にするというのなら、具体的にはどのような制度にするのですか?
【C-7】日本の三権分立は崩壊したのですか? それは具体的には、どういう意味ですか?
【C-8】「三権分立が崩壊した」というのなら、システムを変えるべきですか? それはどのようなシステムですか?
【C-9】政治や行政による教育への関与は不要ですか?
【C-10】政治や行政によるマスメディアへの関与は不要ですか?

 
細かい話をするとキリが無いのですが、とりあえず、大雑把に筆者の現在の認識・理解を以下にお示しします。簡単ですが。


「然り」A-9、A-10
「否」A-1、A-2、A-3、A-4、A-6、A-7、A-8、B-3、B-4、B-5、B-6、B-7、B-8、B-9、B-10、C-1、C-2、C-3、C-4、C-5、C-6、C-7、C-8、C-9、C-10
「不明」A-5
自衛隊海上保安庁の強化、国際的な同盟=包囲網の形成、軍縮の運動、東アジアの共存共栄」B-1、B-2

  5.二王国論

 

自称「福音派の問題の根本には、聖書の読み方歪みや、聖書の世界観・歴史観に関する理解のズレがあるのかもしれません。

 

聖書の世界観では、主(YHWHは唯一の神、永遠の存在、万物の創造主、全宇宙(cosmos)の支配者です。主は完全に善なるお方です。悪魔は神ではなくて天使であり、神=主の支配下にあります。

 

ゾロアスター教の世界観は、善なる神と悪なる神の力が拮抗しているという二元論でした。案外、クリスチャンでも、それに似た世界観で考えて、生きている人が多いのではないでしょうか。


神=主は、この地上世界の歴史を支配し、導いておられます。主は、選民たちの共同体(イスラエル民族、キリスト教会)を支配しておられるだけでなく、主を神として認めない異教の国々も、主の計画の中に位置づけて、動かしておられます。このような考え方を「二王国論」あるいは「二統治説」といいます。

 

なぜ主イエスは、「自分は見えている」と言い張るパリサイ人を、批判なさったのか。なぜ王なるキリストが「罪人の仲間」=アウトサイダーとして生きておられたのか。なぜ「最も小さい者のひとり」を大切になさったのか。なぜ「カイザルのものはカイザルに、神のものは神に」と言われたのか。筆者は、パクス・ロマーナと現代世界を重ねつつ、その意味を考えさせられております。