1.小選挙区制のマジック
第47回衆議院選挙の結果が出ました(2014年12月14日投開票)。
自由民主党 小選挙区223議席 比例代表68議席 合計291議席
公 明 党 小選挙区 9議席 比例代表26議席 合計 35議席
民 主 党 小選挙区 38議席 比例代表35議席 合計 73議席
維新の党 小選挙区 11議席 比例代表30議席 合計 41議席
日本共産党 小選挙区 1議席 比例代表20議席 合計 21議席
次世代の党 小選挙区 2議席 比例代表 0議席 合計 2議席
生活の党 小選挙区 2議席 比例代表 0議席 合計 2議席
社会民主党 小選挙区 1議席 比例代表 1議席 合計 2議席
新党改革 小選挙区 0議席 比例代表 0議席 合計 0議席
無 所 属 小選挙区 8議席
全475議席(小選挙区295議席、比例代表180議席)
自民・公明両党は、憲法改正の発議に必要な「定数の3分の2以上」となる326議席を獲得して、圧勝しました。
自民党の得票率は48%ですが、295ある小選挙区のうち76%にあたる223議席を獲得しました。比例代表選を合わせても、自民党は61%の議席を占めています。小選挙区制を中心とした現行の選挙制度が、自民党に有利に働いているのです。
2.戦後最低の投票率
総務省の発表によると、今回の衆院選の投票率は、小選挙区が52・66%、比例選が52・65%でした。いずれも、戦後最低だった前回をさらに6・66ポイント下回りました。この投票率が低い選挙で力を発揮するのは、組織力です。
投票率が50パーセント前後の場合、100パーセント近くの関係者が投票する組織・団体は、2倍の力を持つことになります。自民党がこれほど議席を獲得していながら、公明党との連立を継続しているのは、これが大きな要因です。共産党の関係者も、投票に行く割合が高いのでしょう。
一方、戦後ずっと労働組合に頼ってきた政党は、労働組合の衰退と共に衰退しているようです。
3.民主党の弱体化
今回の総選挙で自民党が勝つのは、ここ数年の日本政治の流れから見れば、当然です。迷走を続けた民主党政権に対して、日本国民も米国政府も不信任を突きつけたからです。
民主党政権の誕生から自公政権復活、そして今回の選挙までの流れを簡単に振り返ってみましょう。
2009年8月 民主党が政権交代を訴えて総選挙で圧勝(308議席)
2009年9月 鳩山由紀夫内閣が発足
2010年6月 菅直人内閣が発足
2011年9月 野田佳彦内閣が発足
2012年7月 民主党が小沢一郎ら衆議院議員37名を除籍
2012年11月 野田首相が衆議院を解散
2012年12月 民主党が総選挙で惨敗(57議席)自民党が圧勝(294議席)
2012年12月 安倍晋三内閣(自公連立政権)が発足
2014年11月 安倍首相が衆議院を解散
2014年12月 自民党が圧勝(291議席)民主党は73議席
「どんな国でも、内輪もめして争えば荒れすたれ、どんな町でも家でも、内輪もめして争えば立ち行きません」(マタイ12:25)。
2012年7月に、小沢一郎氏の一派が党を割って出たことが、民主党政権の崩壊に決定的な影響を与えたものと思われます。2009年8月の総選挙で民主党は、今回の自民党を上回る議席数を獲得しています。しかし今や、民主党も小沢氏の率いる生活の党も、政権を狙うことすらできないほどに弱体化しました。民主党は今回、小選挙区の半分以上で候補者を立てることができませんでした。
与党を勝たせないためには、野党がちゃんと立候補者を立てて、有権者に別の選択肢を用意しなければいけません。加えて、政策的にも野党が、与党の政策に対抗し得る「対案」を用意しなければなりません。ただ「反対」を叫んでいるだけなら、旧社会党の「牛歩」と同じで、逆効果となる恐れすらあります。
「驕れる者 久しからず ただ春の夜の夢の如し」(平家物語)
4. 蛇のようにさとく
それにしても、与党が衆議院定数の「3分の2」を超えたのは、マズイ状況です。政府=与党は、野党や世論の反対を振りきって強引に、憲法改正(改悪?)などの大改革を進めることが不可能ではありません。
憲法改正は自民党の結党以来の党是であり、悲願としていることです。小選挙区制はまさに、「2分の1」の得票率で「3分の2」の議席数を獲得して、憲法改正を実現する、便利なマジックです。投票率が50%前後ならば、有権者の「4分の1」以上の票を集めるだけで、憲法改正までできてしまうのです。
安倍晋三首相の祖父は、1960年の新安保条約調印を強行した岸信介元首相です。今や安倍政権が強大な権力を握って、再び大きく国政を変えていきそうな情勢です。政府=与党の「暴走」が起こらぬよう、祈りましょう。
「蛇のようにさとく、鳩のようにすなおでありなさい」(マタイ10:16)
「この世の子らは、自分たちの世のことについては、光の子らよりも抜けめがないものなので、主人は、不正な管理人がこうも抜けめなくやったのをほめた」(ルカ16:8)
「どんな王でも、ほかの王と戦いを交えようとするときは、二万人を引き連れて向かって来る敵を、一万人で迎え撃つことができるかどうかを、まずすわって、考えずにいられましょうか。もし見込みがなければ、敵がまだ遠くに離れている間に、使者を送って講和を求めるでしょう」(ルカ14:31-32)
「このことを知っておきなさい。もしも家の主人が、どろぼうの来る時間を知っていたなら、おめおめと自分の家に押し入られはしなかったでしょう。あなたがたも用心していなさい」(ルカ12:39-40)