日本は集団的自衛権を使えないのか?
(日米安全保障条約に署名する岸信介首相とアイゼンハワー大統領)
3月17日の夕方に、安全保障関連法案が、参議院平和安全法制特別委員会で可決され、本会議に緊急上程されました。
「日本は集団的自衛権を持っているが、憲法の制約によって行使はできない、と歴代の政府は説明してきた。その解釈を変えて、限定的に行使を可能にする」
この安保法案について、至るところで、このような説明が為され、野党はこの法案を「戦争法案」だと激しく批判し、抵抗しています。
しかし、実は、そのような説明とは異なる事実があります。
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まず、日本国憲法のもとで集団的自衛権を行使した前例が、わが国にあるのです。朝鮮戦争における米軍指揮下での機雷掃海活動です。
日本特別掃海隊 - Wikipedia
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www.mod.go.jp
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次に、1960年に改定された日米安保条約を見てみましょう。
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<日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約>(日米安保条約)
日本国及びアメリカ合衆国は、(中略)両国が国際連合憲章に定める個別的又は集団的自衛の固有の権利を有していることを確認し、両国が極東における国際の平和及び安全の維持に共通の関心を有することを考慮し、相互協力及び安全保障条約を締結することを決意し、よつて、次のとおり協定する。
(中略)
第三条
締約国は、個別的に及び相互に協力して、継続的かつ効果的な自助及び相互援助により、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として、維持し発展させる。
(中略)
第五条
各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。
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これらの条文からわかるように、日米安保条約は本来、双務性を含んでおり、集団的自衛権を行使する同盟関係なのです。片務性の同盟関係というものは、いびつで異常なものです。
この安保改定が為された1960(昭和35)年に、政府は、集団的自衛権の部分的な行使が可能だ、と国会で説明していました。
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岸信介首相(当時)の発言。
「集団的自衛権という内容が最も典型的なものは、他国に行ってこれを守るということだが、それに尽きるものではないと我々は考えている。そういう意味において一切の集団的自衛権を持たないということは言い過ぎだと考えている」(第34回国会参議院予算委員会会議録第23号 昭和35年3月31日 p.27.)
林修三内閣法制局長官(当時)の答弁。
「例えば、現在の安保条約において、米国に対し施設区域を提供している。あるいは、米国が他の国の侵略を受けた場合に、これに対して経済的な援助を与えるということ、こういうことを集団的自衛権というような言葉で理解すれば、私は日本の憲法は否定しているとは考えない」(第34回国会参議院予算委員会会議録第23号 昭和35年3月31日 p.24.)
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改めて1960年の日米安保条約を読み、時の首相であった岸信介氏の発言を合わせてみると、日本の集団的自衛権行使はすでに「日米安保=日米同盟」というプログラムに組み込まれていたように思えます。
そのプログラムが、岸信介氏の孫である安倍晋三総理によって作動されようとしているのも、偶然ではないでしょう。
1960年から2015年まで、55年の長きにわたってこれを作動せずに来られたことが、奇跡的だったのかもしれません。
しかし、今や東アジアでは「眠れる獅子」が目覚めて、その飢えを満たす獲物を貪り食う状況になっているのです。
<参考文献>
http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/refer/pdf/073002.pdf