輪廻と解脱
「輪廻」という概念は、東洋にも西洋にも広く見られる思想です。
日は昇り、沈むが、また昇る。春ー夏ー秋ー冬そしてまた春が来て……。雨が降り、水は流れ下り、雲となってまた雨を降らせる。地球には、このような循環があります。
生態系もそのような循環がある、と解釈して、輪廻思想は生まれたものと思われます。生から死へ。死から再び生へ。
古代ギリシャの輪廻思想では、人間は人間として生まれ変わると考えていました。
これに対して古代インドでは、人間が動物に生まれ変わることもある、と考えました。
ゴータマ・ブッダの教えの要諦は、「何ものにもとらわれず、あるがままを受け入れる」ことと言えるかもしれません。消極的に見れば「諦め」(諦観)ですね。
ブッダが説いた「解脱」は、輪廻転生に対する恐れにさえとらわれない自由な精神・心理・生き方であったのかもしれません。
ところが、ブッダの弟子たちは、ーー釈迦が説いた「解脱」は輪廻転生そのものから抜け出して極楽浄土に行くことだーーと解釈して、宗教思想を発展させたのでしょう。
では、どうしたら、「解脱」できるのか。そこに、大別して「自力」の道と「他力」の道が生じたのです。
キリスト教はまさに「絶対他力」です。その思想が最も色濃く影響を与えたのが、浄土経典です。
その浄土教の「他力本願」を最も発展させたのは、日本の法然、親鸞、蓮如、浄土真宗です。
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親鸞は聖徳太子に対する信仰を持っていたようですが、「聖徳太子」伝説には、明らかに新約聖書の影響が見られます。それは、空海が日本に持ち込んだ景教の教典が、書き写されて比叡山にあったからでしょう。
ちなみに、最初に日本に来たローマ・カトリックの宣教師、フランシスコ・ザビエルは、浄土真宗の教えを知って驚きました。
「なぜ日本にプロテスタントがいるのか?」
(参照:『ザビエルの見た日本』講談社学術文庫)
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