カナイノゾム研究室

聖書のメッセージや社会評論などを書いています。

クリスチャンが自殺したら……

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クリスチャンの人がうつ病のために自殺した場合、先生はどのように考えますか? 自殺したクリスチャンは罪のために裁かれて滅ぼされる、と教えている牧師もいるようですが」
時々、このような質問を受けることがあります。

  1.主の憐れみと慰め

実際に、私が20代半ばの頃、クリスチャンである友人が、入水自殺をしました。それは職場でいじめを受けていたことが原因です。
その数日前に、彼は私のいた寮に泊まっていました。後に彼の死を知って、私は彼の窮状を理解してやれなかったことを悔やみました。
その友人の葬儀は教会で行われ、彼の両親は後に信仰を持って、救われました。

私は、彼の死を事故と理解しています。「病死」と言ってもよいでしょう。
心理的・精神的に追い込まれた人は、死を逃げ場としてしまうことがあります。発作のように衝動が起こって、思わず身を投げてしまったりするそうです。そうならないように周りの人が配慮して、助けることができれば良いのですが、残念ながら、助けられない場合もあります。
そのような場合に、主は責めたりなさらないし、むしろ、そのような人を許し、慰めてくださる、と私は信じています。

生前、ラザロは悪いものを受けた。しかし今ここで、彼は慰められている」(ルカ16:25抜粋)

  2.保護・カウンセリング

私が牧師となってから、自分の牧会する教会の信徒に、統合失調症の若い女子がいて、しょっちゅう自殺しそうになりました。

彼女が育った家庭は、父親暴力がひどくて無茶苦茶でした。また、彼女は幼少の頃からたくさんのいじめにあっていました。自分の人生に希望が持てなくて、自傷行為を繰り返していました。そして、入院していた病院で交際していた男性が自殺してしまったことが彼女を追い詰めました。それが自分のせいだと思い込んで、それから何年間も、彼女は後追い自殺をしたがりました。

私は友人の死の経験があったので、逆に、たとえその女子が自殺しても自分はショックを受けないと覚悟して、とことん保護に走り回りました。彼女の母親に携帯電話を持ってもらい、いつでもすぐに対応できるようにしました。カウンセリングも続けました。
その母親は無神論者でしたが、その子が教会に来る時に同伴するようになり、信仰を持って救われました。
その女子は大学を卒業して、今も健在です。

神は、神を愛する者たち、すなわち、ご計画に従って召された者たちと共に働いて、万事を益となるようにして下さることを、わたしたちは知っている。(ローマ8:28)

  3.遺族のケア

その後、若いクリスチャン夫婦の家庭で、夫が自宅で自殺するという事件が起きました。その夫婦は別の教会の信徒でしたが、そこが無牧だったこともあって、私は頼まれてその家に駆けつけ、夫人の心理的・信仰的なケアを行うことになりました。
問題は、その夫人が、夫の自殺は自分のせいだと思い込んで、直後から自殺願望が強くなったことです。
私は葬儀を執り行い、その後、毎日、その夫人の友人と協力して、直接会うか電話をするかEメールをするかして、その女性の心理的・信仰的なケアを一年以上続けました。
その女性は立ち直り、再婚しました。

自殺者の葬儀では、自分のせいじゃないか、と心に責めを感じている遺族がいるかもしれません。
そのような場合、遺族に慰めがあることを特に願いつつ葬儀を行うことが大切ではないか、と思います。

あなたがたの父の許しが無ければ、一羽のすずめも地に落ちることはない」(マタイ10:29)。

  4.牧師の務め

以上のようなケースでは、牧師が誰かを裁いたり責めたりすべきではないでしょう。自殺したクリスチャンは、罪のために裁かれて、滅ぼされる」。そんなことは人間が言うべきことではない、と私は思います。たとえ牧師であっても。

死んだ人の事情を完全に、その心の奥底まで知っている人は、まず、いません。
人を裁いて報いることは主の権限であり人がそれを冒してはいけないでしょう
憐れみ深く慰めに満ちた神の御手にすべてをゆだねることを、私はお勧めします。

心理的・精神的に追い込まれて自殺をはかる人の中には、
(1) セルフイメージが非常に低い
(2) 自責の念が強い
ために、自分で自分を追い込んでしまう人が少なからずいるように思います。

(1) 牧師は、その人が持つ悩み苦しみについてよく話を聴くことが、まず必要です(傾聴)。
(2) その上で、聖書の教える世界観・人間観とイエス・キリストによる救いについて、わかりやすく確実に説くことが重要です(創世記1:26-27、詩篇139)。
(3) そして、共に祈りましょう主に信頼して希望を抱くことを、共に学べたら、幸いです。

様々な面で危険性がある場合には、隔離保護入院等の処置が必要な場合もあります。医師やカウンセラー、学校、職場、福祉施設児童相談所、保健所、警察などと連絡・協力するケースもあります。医師の指導家族の協力は、特に重視すべきことだと思います。

  

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  【推薦書】

 

斎藤友紀雄『自殺危機とそのケア』

自殺危機とそのケア (キリスト教カウンセリング講座ブックレット 13)

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 平山正実、他『自死遺族支援と自殺予防』

自死遺族支援と自殺予防

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柏木哲夫『病める心の理解』

病める心の理解

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T.G.タッパート『ルターの慰めと励ましの手紙』

ルターの慰めと励ましの手紙

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バーナ・バーキー『かけがえのないあなた』

かけがえのないあなた―自分自身を知るために

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うつ・気分障害協会『「うつ」からの社会復帰ガイド』 

「うつ」からの社会復帰ガイド (岩波アクティブ新書)

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