KANAISM BLOG ー真っ直ぐに行こうー

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安保法案が衆院本会議で可決!

集団的自衛権の限定的な行使を可能にすることや自衛隊の活動範囲を拡大することなどを含む安全保障関連法案が17日午後、自民党公明党・次世代の党などの賛成により可決された。生活の党と山本太郎となかまたちは衆院本会議を欠席し、民主党維新の党、共産党社民党は採決の前に退席した。

いわゆる「60日ルール」が適用できるようになったため、参議院で採決に至らなくても、この法案は今の国会で成立する公算が大きくなった。

衆議院での法案審議は116時間に及んだが、国民の十分な理解が得られていないことを、安倍首相も認めている。それでも安倍首相
日本国民の命を守り、そして戦争を未然に防ぐために、絶対に必要な法案であります。国民の皆様の議論が深まっていくように、党を挙げて努力をしていきたい
と語っている。

www3.nhk.or.jp

nhk.jp

安全保障に関係する法律広範囲にわたっており、専門性が高い。また、安全保障に関係する情報は国家機密として非公開とされるものが多い。そのため、すべての有権者に、安全保障関連法案に関する完全な理解を求めることは、不可能だ。政府として説明責任を果たすのは当然だが、どこまで説明すれば十分かいつまで審議すれば十分か、という問題はどうしても残る。安倍首相は最終的には、国政選挙で国民の負託を受けた与党・政府の責任において国家・国民を守るという大義名分によって、この「平和安全法制」を成立させるだろう。

政府国会議員マスコミ学者専門家による説明解説がさらに必要だが、国民の側でもこの法案について理解し批評する努力が必要だ。この法案は、すべての国民と今後生まれ来る子どもたちの生活・人生に大きく関わる問題であるからだ。

安全保障関連法案の条文と公式の解説は、内閣官房のウェブサイトにある。

「平和安全法制」の概要 (我が国及び国際社会の平和及び安全のための切れ目のない体制の整備)

内閣官房 内閣府 外務省 防衛省

http://www.cas.go.jp/jp/houan/150515/siryou1.pdf


第189回 通常国会提出
我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案」(平和安全法制整備法案
国会提出日:平成27年5月15日
担当部局:内閣官房国家安全保障局
改正される現行法10本:自衛隊法、重要影響事態法、武力攻撃・存立危機事態法、米軍等行動円滑化法、特定公共施設利用法、外国軍用品等海上輸送規制法、捕虜取り扱い法、国家安全保障会議設置法、船舶検査活動法、国連平和維持活動協力法

http://www.cas.go.jp/jp/houan/150515/siryou4.pdf

 

第189回 通常国会提出
国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案」(国際平和支援法案
国会提出日:平成27年5月15日
担当部局:内閣官房国家安全保障局
新規立法:国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援に関する法律(国際平和支援法)

http://www.cas.go.jp/jp/houan/150520/siryou3.pdf

 

この法案は、我が国を取り巻く厳しい国際情勢に対応するものであると共に、戦後70年続いた日米安保体制自衛隊の性格を大きく変更するものだ。安倍首相は「積極的平和主義」を強調しており、それが日本国憲法の「国際協調主義」に調和すると言う政治家や学者、専門家などもいる。

自衛隊は、戦前の日本の軍隊とは、根本的に違う性質のものだ。自衛隊は極端なまでに「専守防衛」に特化したArmyだ。この専守防衛に徹してきた自衛隊こそ、世界の各地でPeacemakingを行うのに適した組織だろう。その防衛力が「自衛」のためばかりでなく、世界各地の紛争地で平和を回復・維持し、危険にさらされてる民衆を保護する「他衛」のために用いられるならば、それは重要な国際貢献となる。

日本国憲法 前文>
 日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
 日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
 われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
 日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。

日本国憲法は成立時において、国連主導のグローバルな安全保障体制が発展していくことを想定していた。しかし、この戦後70年の間、世界の現実はその期待を裏切るものであった。その大きな理由として、連合国側の5大国、すなわち米国、英国、フランス、ソ連(現ロシア)、中国が国連常任理事国として「拒否権」を持ったことがあげられる。米英仏を中心とする西側・資本主義陣営とソ連・中国を中心とする東側・社会主義陣営が対立する東西冷戦時代には、国際紛争が起こっても、国連軍が出せない場合が多かった。そのため、米国を中心とするNATOや有志連合によって、多国籍軍が派遣されるという場合が多かったのだ。

集団的自衛権の行使と自衛隊の海外派兵は違憲である」と言う学者が多い。世論もそれに賛同する傾向が見られる。


日本国憲法

第二章 戦争の放棄

第九条  日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
○2  前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。


筆者は、政府が提案する「平和安全法制」に基本的に賛成だが、これは日本国憲法の許容範囲を越えていると言わざるを得ない。また、閣議決定だけで集団的自衛権の限定的行使容認を決定したことは、立憲主義議会制民主主義に反すると言わざるを得ない。政府与党には、正々堂々と憲法改正を国民に訴えて、「自衛隊」、「専守防衛」、「集団的自衛権」、「国連平和維持活動」などについて憲法に明文化してもらいたい。

なお、筆者は、自民党の「憲法改正草案」には反対する部分が多い。これは国家の横暴を許し、国民の自由と権利を奪うものであると断ぜざるを得ない。与党には総選挙で大勝したりがあるのではないか。「驕れる者久しからず ただ春の夜の夢の如し」。この驕りを許した野党の責任は、より重大なものである。

自民党憲法改正草案>

https://www.jimin.jp/policy/policy_topics/pdf/seisaku-109.pdf