■聖書朗読 ヨハネの手紙 第一 2章18~29節(新改訳第3版)
18 小さい者たちよ。今は終わりの時です。あなたがたが反キリストの来ることを聞いていたとおり、今や多くの反キリストが現れています。それによって、今が終わりの時であることがわかります。19 彼らは私たちの中から出て行きましたが、もともと私たちの仲間ではなかったのです。もし私たちの仲間であったのなら、私たちといっしょにとどまっていたことでしょう。しかし、そうなったのは、彼らがみな私たちの仲間でなかったことが明らかにされるためなのです。
20 あなたがたには聖なる方からのそそぎの油があるので、だれでも知識を持っています。21 このように書いて来たのは、あなたがたが真理を知らないからではなく、真理を知っているからであり、また、偽りはすべて真理から出てはいないからです。22 偽り者とは、イエスがキリストであることを否定する者でなくてだれでしょう。御父と御子を否認する者、それが反キリストです。23 だれでも御子を否認する者は、御父を持たず、御子を告白する者は、御父をも持っているのです。24 あなたがたは、初めから聞いたことを、自分たちのうちにとどまらせなさい。もし初めから聞いたことがとどまっているなら、あなたがたも御子および御父のうちにとどまるのです。25 それがキリストご自身の私たちにお与えになった約束であって、永遠のいのちです。
26 私は、あなたがたを惑わそうとする人たちについて以上のことを書いて来ました。27 あなたがたの場合は、キリストから受けたそそぎの油があなたがたのうちにとどまっています。それで、だれからも教えを受ける必要がありません。彼の油がすべてのことについてあなたがたを教えるように、――その教えは真理であって偽りではありません――また、その油があなたがたに教えたとおりに、あなたがたはキリストのうちにとどまるのです。28 そこで、子どもたちよ。キリストのうちにとどまっていなさい。それは、キリストが現われるとき、私たちが信頼を持ち、その来臨のときに、御前で恥じ入るということのないためです。29 もしあなたがたが、神は正しい方であると知っているなら、義を行う者がみな神から生まれたこともわかるはずです。
■説教要旨 「キリストの真理にとどまれ」
現代の社会は次々と新しいものを生み出して、それらを世界中に流通させています。その新しい環境に順応することが適切だ、という価値観が支配的です。宗教・キリスト教の世界ですら、そのような傾向があるかもしれません。
1世紀の地中海世界でも、これに似た現象がありました。パクス・ロマーナ(ローマの平和)と呼ばれる安定した世界秩序のもとで交通や物流が発達し、グローバリゼーションが進行していたのです。使徒ヨハネが宣教の拠点としたエペソ(エフェソス)は、東西の大動脈が通っており、世界の各地から諸々の宗教が流入していました。市民はいつも知的・宗教的な新しい刺激を求めていました。
1世紀後半のキリスト教会では、グノーシス主義と呼ばれる宗教思想が混入して、大きな問題となりました。グノーシス主義は物質や肉体を悪とし、霊魂を善とします(霊肉二元論)。人の霊魂は、神秘的な知識(グノーシス)を得ることによって、肉体という牢獄から解放されて、天に帰ることができる――。これがグノーシス主義の基本的な思想です。悟りによって救われるというのです。
その宗教では、秘密の入会儀式において奥義が授けられ、入会者はグノーシスを得た「霊の人」と見なされます。霊の人は「深み」を知る霊的貴族と自認して高慢になり、まだ奥義を授かっていない者を「肉の人」と蔑みました。
その一派であるケリントス主義者はこう教えました、「イエスは処女から生まれたのではなく、ヨセフとマリアから普通に生まれた人間だが、バプテスマの後にキリストの霊が鳩の形で彼に降った。イエスが苦しみを受ける前に、キリストの霊は彼を離れていた」。このように〈イエスがキリストであることを否定する者〉(2:22)、〈肉体をもって来られたイエス・キリスト〉(4:2)を告白しない霊は〈反キリスト〉(2:18)です。
私たちが信仰と実践の基準とする聖書は、1900年以上経った今も、変わることがありません。使徒ヨハネは、〈あなたがたには聖なる方からの注ぎの油があるので、だれでも知識を持っています〉(2:20)と述べています。この「油」は聖霊の象徴です。〈その油があなたがたに教えたとおりに、あなたがたはキリストのうちにとどまるのです〉。聖書を通して聖霊が証ししてくださるイエス・キリストの真理に、しっかりと、とどまりましょう。
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