プロテスタント福音派の教会・教団・宣教団体の交流・協力機関である日本福音同盟(JEA)は、今年6月に、「戦後70年にあたってのJEA声明」という文書を発表しました。
http://jeanet.org/release/2015/06/655
その中に違和感を感じる部分がありました。その部分を以下、JEAの公式サイトから引用します。
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
(A)私たちJEAは、1995年の「戦後50年にあたってのJEA声明」の中で、第二次世界大戦時下に、皇国史観のナショナリズムに迎合して神社参拝という偶像礼拝を犯し、皇国の道に従うことを第一としてアジア諸国への侵略加害に加担したキリスト教会の罪責の悔い改めと謝罪を表明しました。
▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲
そもそも、戦時中に日本のプロテスタント教会が犯した罪責について、戦後生まれのJEAが悔い改めと謝罪を表明するという、行為そのものに違和感を感じます。
筆者が所属する日本イエス・キリスト教団を含めて、いわゆる「きよめ派」(ホーリネス派)には、戦前から存在した教会がたくさんあります。
戦時中に、日本のキリスト教会・教団のほとんどは、国策によって一つにまとめられて「日本基督教団」となりました。
戦後、そこから脱退し独立した教会・教団の一部分が、終戦から23年後、1968(昭和43)年に、戦後生まれの教会・教団と共に設立したのが、日本福音同盟(JEA)です。戦後に誕生した教会・教団には、このような声明はそぐわないのではないでしょうか。
日本基督教団は今でも、日本で最大のプロテスタント教団として存続しています。こうした声明は、JEA単独ではなくて、日本基督教団あるいは日本キリスト教協議会と連名で出すのが適切ではないかと思います。
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
(B)戦後70年を迎え、戦時下の生の証言を聞くことが難しくなりつつある今、自国中心の歴史修正主義が台頭し、アジア諸国の人々へのヘイトスピーチ問題などにみられる民族差別が顕在化しています。国旗・国歌の強制、一部の閣僚による神社参拝の常態化など、信教・思想の自由を脅かし、天皇制・国家神道体制の復活につながるような動きもみられます。また特定秘密保護法制定、沖縄の米軍基地問題、閣議決定のみによる集団的自衛権行使容認の流れの中で、戦後日本のあり方を大きく変更しようとする安全保障関連法案が国会で審議されています。キリスト教界においては、戦前と同じような日本的キリスト教を標榜し、皇国史観のナショナリズムに迎合するような動きが再びみられるようになってきています。
(C)このような中で、私たちJEAは、戦時下における日本の教会の罪の歴史と悔い改めの決意を次世代に伝えます。
▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲
この文脈において述べられている「歴史修正主義」とは、どのような意味でしょうか? Bの部分の構成を分析してみます。
1.自国中心の歴史修正主義
2.民族差別の顕在化
◇アジア諸国の人々へのヘイトスピーチ問題など
3.天皇制・国家神道体制の復活につながるような動き
◇国旗・国歌の強制
◇一部の閣僚による神社参拝の常態化
4.安全保障政策の変更
◇特定秘密保護法制定
◇沖縄の米軍基地問題
◇閣議決定のみによる集団的自衛権行使容認
◇安全保障関連法制
5.皇国史観のナショナリズム
◇日本的キリスト教
この分析から以下のことが明らかです。
◆JEAは、戦前・戦中の皇国史観、国家神道、アジア太平洋戦争を否定的に見る「東京裁判史観」を受け入れている。
◆政府与党は戦前の日本のナショナリズムを肯定的に見ており、それに回帰しようとしているーーとJEAは理解している。
西欧では、ナチスによるホロコーストを否認する論者たちが、「歴史修正主義者」と呼ばれます。JEAの声明での用法は、そのような西欧の呼称に倣ったものでしょうか?
「歴史修正主義」
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%B4%E5%8F%B2%E4%BF%AE%E6%AD%A3%E4%B8%BB%E7%BE%A9
「歴史的修正主義研究会」
http://revisionist.jp/
(注)参考まで。推薦するものではありません。
そもそも「歴史」は修正されるべきものです。実際に、新たな史実の発見によって「歴史」はどんどん変わっています。
http://www.amazon.co.jp/dp/4800247373/
特定の歴史観を絶対視して、それを修正しようとする者らに「歴史修正主義」というレッテルを貼り、社会的・政治的な圧力をかける輩は、「歴史」を知らない愚者です。そのようなイデオロギーこそ、国民の判断を誤らせて、亡国へと誘う危険な思想運動であることに、注意すべきでしょう。
http://agora-web.jp/archives/1626995.html
米軍普天間基地を名護市辺野古に移設することに反対する市民団体が12日、国会議事堂周辺で集会を開きました。集会参加者は「安倍晋三政権打倒」を訴えましたが、一部の参加者が「安倍はサタンだ」と叫んだようです。
特定の国をナチスになぞらえたり、その国を代表する総理大臣をヒトラーになぞらえたり、サタン(悪魔)呼ばわりしたりするのは、重大な侮辱であり、名誉毀損です。
戦前戦中の日本をナチス・ドイツと同一視するのは、両者の相違を無視した乱暴な言説です。
これらは国家権力だけでなく、我々国民に対する侮辱でもあるということを、理解していただきたく願います。国辱です。
「愛は礼儀に反することをしない」(第一コリント13:5)
戦前戦中の日本の教会は、右側に偏向して誤った道を進みました。その反動なのか、戦後は左側に偏向して誤った道を進みかねない状態です。
この時代にあって、いかに主のご計画を理解し、いかにそれに従って行動するか。聖書と歴史に学びつつ、ご一緒によくよく考えて進んでいきたいですね。