エコロジー革命のすすめ 01 リベンジ
1.リベンジ
2011・3・11。福島第一原発事故。あの日から我々日本人は、再び原子力発電の問題を切実に考えるようになりました。「再び」というのは、チェルノブイリ原発事故(1986年4月26日)の後にも、「反原発」の運動や議論が盛んになされたからです。
あれから四半世紀を経ているのに、この問題に関して、我々はいったい何を解決してきただろうか? 大きな反省があります。
このような反省は、あって然るべきでしょう。3・11の事故によって郷土を失い、未だ仮設住宅に暮らす人たちがいるのですから。未だこの事故は終息していないのですから。
東京を中心に全国各地で、「原発再稼働反対」、「脱原発」を訴えるデモや集会が継続して行われています。その参加者は大変な数になっています。皆さん、心に期するところが、あるのでしょう。
2.それでも、まだ原発にしがみつくのか
ところが、政府は6月に、安全性の問題が指摘されている大飯原発の再稼働を決定しました。7月1日から再稼働は始まっています。電力会社は今、次々と全国の原発を再稼働させようとして、作業を進めています。
脱原発運動の参加者から「このままなし崩し的に原子力発電が続けられて、脱原発運動は行き詰まり、消失するのではないか」と危惧する声も出始めました。
政府は、脱原発運動を意識してか、「エネルギー・環境の選択肢に関する討論型世論調査」なるものを、7月上旬から8月上旬にかけて全国11都市で実施しています。これに先立って6月29日に、政府は「エネルギー・環境に関する選択肢」を提示しました。これには2030年時点での総発電量に占める原発の比率を
(1) 0%、(2) 15%、(3) 20~25%
とする3つのシナリオがあります。
http://www.npu.go.jp/policy/policy09/pdf/20120629/20120629_1.pdf
http://www.kokumingiron.jp/document.pdf
http://www.sentakushi.go.jp/scenario/
これに対して電気事業連合会は、少なくとも (3) 20~25%のシナリオが必要な水準だ、と主張しています。
http://www.fepc.or.jp/theme/mix/20120720_s2.pdf
経団連は、政府のシナリオの様々な不備を指摘した上で、「ゼロシナリオ」、「15 シナリオ」を選択肢として認めず、「20〜25 シナリオ」で「より現実的なものに再構築する」ことを求めています。
http://www.keidanren.or.jp/policy/2012/057_honbun.pdf
日本商工会議所は、政府が示した「選択肢」について「いずれも実現可能性に乏しい」と厳しく批判しています。
http://eco.jcci.or.jp/wp-content/uploads/2012/07/ikensyohonbun.pdf
要するに、財界の方針=経済成長至上主義を続ける限り、完全な脱原発は相当長期にわたって有り得ないことなのです。しかし、その考え方は時代錯誤です。もはやそのような古い枠組みは壊して、一新しなければなりません。今が、その変革を断行すべき時なのです。
3.我々は今どこにいるのか
我々が生きている「ポストモダン」という時代は、近代人が持っていた「科学によって何でもできる、何でもわかる」という全知全能感がとんでもない錯覚だったと気がついた、という時代です。でも、まだ「モダン」の次に来るべき世界を創出できていないので、「ポスト」付きで「モダン」を引きずっているわけです。
人間がやることには、どうしてもミスが生じます。フクシマという「人災」も起きてしまうのです。国会や政府の事故調でも、それは、はっきり指摘されています。問題は、原発の場合、事故が及ぼす影響の大きさと時間的な長さが、他のものの比では無い、ということです。
スリーマイルやチェルノブイリの事故を体験した後、欧米人には、これが常識です。脱原発の速度や方法に違いはありますが、根本的な考え方と目指すところは同じです。長年にわたりエコロジー運動が盛んに行われてきたフランスの場合、原発を続けるのは確信犯だからでしょう。
中国もインドもそれぞれ、これから原発を50基以上造る予定です。中国13億人、インド12億人、計25億人。これに続く新興国・発展途上国が多数あります。これらの国々が皆、欧米や日本のように国民全体が豊かな生活を享受できるようにしたならば、地球環境にどれほどの負荷がかかるでしょうか。地球科学の専門家たちは「地球環境は、もうこれ以上の経済成長には耐えられない」と指摘しています。
人類の文明社会は地球環境を基盤として成立するものです。その基盤が崩壊したならば、我々の社会も崩壊します。人類は今ただちに、根本的に思考と行動とシステムを、地球のエコシステムに調和するように変革しなければならないのです。
日本はそのモデルとなるべきであり、なれるのではないでしょうか。
4.エコロジー教育? それとも、環境教育?
学校教育も、欧米では20年くらい前までに、すっかり変わっています。しかし、日本で行っているのは未だに「エコロジー教育」ではなくて「環境教育」です。
産業政策やエネルギ—政策は相変わらず「モダン」なまま。国民=消費者に環境問題に関する義務や負担を負わせるべく、従来の教育にメッキを被せただけ。だから、すぐに剥がれてしまいます。
小手先の修理・修繕では、もう間に合わなくなっているのが、この国の実状です。本格的な改築・新築が必要なのです。
5.原発はクリーンなエネルギ—源?
政府や電力業界は、「原子力発電は二酸化炭素を出さないクリーンなエネルギー源です」と、未だにテレビのCMなどで宣伝しています。
教育現場の教師の方々は、どのように教えているのでしょうか? 悩んでいる先生が多いでしょうね。闘っている先生も多いでしょう。福島県の先生たちは、いかがですか? 福井県の先生たちは、いかがですか?
「ゲンパツって、クリーンなの? それなら、どうして ゲンパツからでるゴミを すてるばしょが ないの?」
子どもでもわかるでしょう、それくらいのウソは!
「ゴミは分別して、ちゃんと捨てましょうね」
子どもたちは、そのように教えられているのですから。
6.この人たちに、この国のリードを託してよいのか
日本の指導者である政財官学の人たちは、こんなウソを宣伝するほど劣化してしまったのか! 情けないとしか言いようがありません。一国民として恥ずかしいです。
「わからない」ことは、恥ずかしいことではありません。わからないのに「わかる」とか、できないのに「できる」とか言うことが、人間として恥ずかしいことなのです。それは無責任な態度だからです。
この国をリードする人たちには、それにふさわしい日本人としての美学を持っていただきたく願います!
7.総選挙で「エコロジー革命」を起こそう!
来るべき総選挙は、この国の方向性を決める、極めて重要な選挙となるでしょう。この選挙で、我々は、消費税、社会保障、TPP、国防・領土問題など、多数の難問に取り組まなければなりません。「郵政選挙」のように争点を単純化してはなりません。
けれども、やはり「原発問題」には特別な大きさと重みがあります。その選択の結果は、我々だけでなく、数十年、数百年、数千年も後の人々にまで影響する可能性があるからです。
原発問題と資源・エネルギ—問題に関しては、与党も野党も内部で政策や立場が大きく分かれています。有権者が、脱原発=エコロジー派の候補者を選択するならば、この総選挙は、この国の既得権益を握る「体制」をひっくり返す「革命」となるでしょう。
我々は適切な選択をして、この美しく清らかな日本の国土を、美しいままで、清らかなままで、子々孫々、後代の人々に手渡しましょう!