「初めに神が天と地を創造された」(旧約聖書 創世記1:1)
「神を信じるなんて科学的じゃない。神がいるなら、科学的に証明してみせてよ」。
このような科学万能・科学絶対の科学信仰を持つ人が、今だに日本では少なくないようです。しかし今日、世界人口の3分の1はキリスト教徒であり、ムスリムが2割ですから、世界の半分の人々は聖書の創造主を信じているのです。世界で最も科学的な研究が盛んに行われている米国でも、国民のおよそ8割がキリスト教徒であると自覚しており、およそ4割が毎週礼拝に参加しています。現代の世界の科学者にも、神を信じる人は少なくありません。
多くの日本人は学校で教えられた進化論を信じており、「キリスト教信仰は進化論と矛盾する」と考えているようです。そこで本稿では、キリスト教神学と科学、創造論と進化論の本質的な次元の違いについて説明することとします。
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創造論は神学の一部分であり、「我々が生きているこの世界は、なぜ存在するのか」、「我々人間はなぜ存在するのか」という問題を扱うものです。すなわち "Why" という領域の問題です。創造論は近代科学が誕生するより遥か昔からあります。聖書の創造論は、その答が「神=ヤーウェ」であることを教えています。
西欧に生まれた近代科学は、聖書の創造論を基盤としたキリスト教の世界観から生まれました。地動説を主張したガリレオは、「聖書的世界観」を持つがゆえに、当時のローマ・カトリック教会の天動説を批判したのです。この点はよく誤解され、公教育の場でも間違ったことが教えられています。
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一方、進化論は本来、自然科学の一部分であり、「我々が生きているこの生命系の世界と生物は、どのようにして現在の状態になったのか」という問題を扱うものです。すなわち "How" という領域の問題です。
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創造論と進化論は、そもそも扱うべき問題の次元が異なります。「創造科学」なるものを教える人たちがいますが、これは始めから矛盾を内包した概念です。創造論は科学ではなくて神学だからです。近代科学の枠組みで古代の文書である旧約聖書を解釈しようとするのは、無理な仕業であり、重大な間違いを犯しかねません。
創造論と進化論を同列の次元で論じて両者を対立させる人が大勢います。しかし、創造科学を説いて進化論を否定することも、進化論を主張して創造論を否定することも、的外れです。
創造論と進化論、両者ともに支持する「有神論的進化論」という立場もあります。筆者は、進化論が十分に証明された理論であるとは思いませんので、この立場には立ちません。
また、創造科学だけが正統的なキリスト教の立場だと主張して、有神論的進化論者を正統的なキリスト教徒と認めない、キリスト教原理主義の動きにも、疑問を感じます。独善的で狭量な態度は、神学においても科学においても、真理を探求する妨げとなるだけであり、人々に余計なつまずきを与えるものだと思います。
ただし、進化論が自然科学の領域をはるかに超えて、宗教の領域まで侵食したのも事実です。ダーウィニズムは、適者生存など一種の社会思想にまで発展しました。
人間理性の限界を自覚するポストモダンの時代となってからは、科学と神学の本質的な違いが理解されるようになり、聖書の創造主を信じる科学者が増えているようです。同時に、キリスト教の側でも、科学に関する理解が深まってきたように思います。 遺伝子の研究によって、生物がいかに緻密な設計図を持っているか、その驚異的な真実が明らかになっています。これは偶然に生じるはずがありません。
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それゆえ、この宇宙と生物を生み出した恐ろしく高度な知性と力が「始め」にあったはずだ、と推論されるようになりました。その学説を「インテリジェント・デザイン」(Intelligent design)「ID説」と呼び、その知性と力を「サムシング・グレート」(Something Great)と呼んだりします。
聖書は次のように教えています。
初めに神が天と地を創造された。
地は荒漠としていて空虚であり、闇が深淵の水面上にあり、神の霊がその水面上で動いていた。
神は「光あれ」と言われた。すると光があった。
(創世記1:1-3)
神はまた言われた、「われわれの像に、われわれにかたどって人を造り、これに海の魚、空の鳥、家畜、地のすべての獣、地のすべての這うものを治めさせよう」。
神は自分の像に人を創造された。すなわち、神の像に創造し、男と女に創造された。
神は彼らを祝福して言われた、「生めよ、増えよ、地に満ちよ、地を従わせよ。また海の魚、空の鳥、地に動くすべての生き物を治めよ」。
(創世記1:26-28)
聖書は、この宇宙と生物と人間を創造した「神」が「初めに」おられた、と教えています。神は「ロゴス」(理性、法則)を持ち、万物を創造する「力」を持っておられますが、それだけでなく神は「ペルソナ」(Persona 位格、人格)を持つお方です。
神はご自身に似た人格者として人間(person)を創造されました。それは人間が神と人格的(personal)な交わりを持つためであり、人間が神の代理者として地を治めるためでした。
この真理がわからなくなった人間に、神を直接、啓示するために、子なる神=イエス・キリストが人間となってこの世に来られたのです。
初めに言があった。言は神と共にあった。言は神であった。
この言は初めに神と共にあった。
すべてのものは、これによってできた。
できたもののうち、一つとしてこれによらないものはなかった。
この言に命があった。そしてこの命は人の光であった。
すべての人を照すまことの光があって、世にきた。
彼は世にいた。
世は彼によってできたのであるが、世は彼を知らずにいた。
言は肉体となり、わたしたちのうちに宿った。
わたしたちはその栄光を見た。
それは父のひとり子としての栄光であって、めぐみとまこととに満ちていた。
科学者とキリスト者、双方において誤解・偏見・つまずきが取り除かれて、このような真理についてオープンな議論ができたら、いいですね。
真理の光が世界中の人々に照らされることを、祈ります。