「社会運動」だぜっ!
『社会運動』。この雑誌の編集主幹をしている澤口隆志さんには、大変お世話になった。もう25年も前になる。私が大学を出て働いた、最初の職場の上司だった。大学でエコロジー経済学を専攻した関係で生活クラブ生協を知り、その新しい社会運動を体験してみたくなったのだ。
しかし、自動車の免許を取得したばかりで、いきなり1.5トンのトラックを運転しなきゃならない。横に乗って指導をしてくださった上司や先輩の方々には、メーワクどころじゃない、コワ〜〜イ思いをさせてしまった f- -;; ぎっくり腰になった時は、事務局長の澤口さんにまで配達を代わっていただいた。
正直言って、「こんなに良い職場ってあるのか!?」とヒジョーに驚いた。仕事はきついし、食品を扱うので責任は重い。でも、職員は皆、自分に合った自由な生き方をしていて、互いを思いやり、助け合うことがごく自然にできている。すごくフラットな関係。クリよりクリらしいかも、とノンクリに対する偏見を完全に打破されてしまったのだった。
頭でっかちの自分であったが、澤口さんはよく理解してくださり、いろいろな学習のチャンスを与えてもらった。私が秘匿していた大学の卒業論文『新しい共生社会の構想』を「読みたい」とご所望だったので、お渡ししたら、しっかりとコピーを取っておられた。
あの頃、私は、近代産業社会のカラクリを歴史的に考察しながら、「エコロジー協同社会をどうしたら実現できるか」それを考えていた。答えがよくわからず、あの卒論は駄作だと思っていた。しかし、実のところ、誰も確かな答えを持ってはいなかったのだ。
kanai.hatenablog.jp
あれから25年。ポスト・チェルノブイリからポスト・フクシマへと時代は移行した。
柄谷行人は「交換様式」を解明することによって、「エコロジー協同社会」という課題について理論的に整理してくれたと思う。
柄谷のコミュニズム理解を金井流に翻訳すると、次のようになる。
ーーわずかな資本家が資本を独占する資本主義よりも、株式会社が資本を所有する法人資本主義の方が優れている。株式会社を国有化する社会主義は、法人資本主義よりも劣っており、革命は後退している。株式会社の所有を労働者と消費者の協同組合に移し、生産−消費協同組合のグローバルなアソシエーションが国家に取って換わることが、コミュニズムの目標である。その実現のためには、資本に転化しない代替通貨とそれに基づく決済システムや資金調達システムが必要であるーー。
(『可能なるコミュニズム』pp.9-11, 37-40, 44-46, 62-69, 85-87, 『トランスクリティーク』岩波現代文庫pp.34-35, 442, 『世界史の構造』岩波現代文庫pp.391-396, 399-401を参照)
これは、ロシア革命以降、国家社会主義的な方向に進んできた共産主義勢力に対するプロテストであり、オルタナティブの提示である。柄谷の解釈では、これこそマルクスの目指していた方向性であり、これを国家社会主義的な方向に変えたのはエンゲルスだ、というのだが。柄谷は、カント、ポランニー、ウォーラーステイン、岩田昌征、生活クラブなどから「いいとこ取り」をして、マルクスを再解釈したんじゃないかな?
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オルター・トレード・ジャパン発行『季刊 at』15号(2009年)に、澤口隆志氏が「賀川豊彦と生活クラブ運動」という論文を書いておられる。両者に直接的なつながりは無いと思うが、興味深い論考である。
そうなると、やっぱり鍵を握っているのは、解放の神学=BCC(Basic Christian Community)でしょ! 私が書いていた筋書きも悪くなかったかも、と今頃になって思うのである(爆)
【余録】
■なぜ生活クラブ生協が優れているのか
安全な食品を手に入れるためには「産直運動」をするしかありません。産直運動は、組織の形態によって、生活協同組合(生協)となったり、共同購入グループとなったり、会社となったりします。その中で最も優れている組織は生協です。なぜかわかりますか。
(1)生協、とりわけ生活クラブのように組合員の自主管理・自主運営が徹底している生協では、組合員が直接、生産者とつながって、生産から流通、消費、廃棄、リサイクルまで全体の過程を知ることができ、それらを変えることができます。
(2)無農薬や低農薬で生産すると、コストはどうなるでしょうか。また、鶏肉や豚肉、牛肉をより良い環境で十分な年月をかけて生産すると、コストはどうなるでしょうか。これは当然高くなります。圓尾和紀氏が勧めている「大地を守る会」は株式会社です。大地は、ある程度の高所得の家庭でなければ、利用し続けるのが難しいでしょう。生活クラブやグリーンコープなど食の安全にこだわりのある生協は、大手の生協よりも価格は高くなりますが、大地よりは安く購入できます。
今が食べどき!旬の野菜・フルーツ | 有機野菜や自然食品の購入は大地を守る会のお買い物サイト
(3)生協は消費生活協同組合法に基づいて運営されており、社会的な公正が確保できる仕組みになっています。
■有機と農薬
(1)「有機」(オーガニック)の取り組みには以下の目標があります。
【環境の保全】化学農薬や化学肥料を使わずに、水、土、大気を汚染から守ります。
【健康な生活】保存料や着色料などの添加物をできる限り低減し、食品の安全性を確保します。また、化学的な染料や塗料を使用せず、アレルギーのない生活を目指します。
【自然との共生】自然の動植物を守り、生物多様性を保全します。
【身土不二】適地適作・地産地消で、地域の文化を大切にします。
【健全な社会】児童労働の禁止、植民地栽培の排除、南北格差の解消など、人を大切にする社会を実現します。
(2)日本では、有機生産の基準がJAS法で定められています。現在、日本において有機基準(有機JAS規格)が制定されているのは、「有機農産物」「有機加工食品」「有機畜産物」「有機飼料」の4品目のみです。有機農産物の基準は次のリンク先にあります。
http://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/attach/pdf/yuuki-31.pdf
(3)今日、無農薬は可能か、無農薬は適切か、という問題があります。日本の農家の平均年齢は著しく高齢化しており、除草剤すら使わないという無農薬農業は、実際には無理である場合が多いのです。
農薬の安全性Q&A 1 - 農薬でんわ相談 - 公益社団法人 緑の安全推進協会
(4)単純に日米の農薬使用量を耕作面積当たりで比較して、「日本は農薬使用量は多い」と批判する人たちがいます。しかし、日本と米国では使うことができる農薬の種類が違いますし、使い方も違います。日本は安全性の高い農薬の開発に成功しています。
一般のみなさんへ|安全性-リスク(影響)|農薬について知ろう|日本農薬学会