主を待ち望む者は、新たなる力を受けて、昇ることができる。
走っても疲れず、歩んでも倦まず、鷲のように昇る。
◆トランスフォーメーション・セミナー
アメリカや日本で、ニューエイジ系のトランスフォーメーション・セミナー(transformation seminar、自己啓発セミナー、自己改造セミナー)が流行っていて、クリスチャンでも受講する人が少なからずいるようです。名称は様々ですが、受講料は数十万円と高額です。
キリスト教には聖会、修養会、ケズイック・コンベンションなど健全な トランスフォーメーション・セミナーが古くからあるのですが、それらが現代のクリスチャンに上手くフィットしていないのでしょうか?
近年アメリカから日本に輸入されてくるキリスト教系の トランスフォーメーション・プログラムには、ニューエイジ的な心理学の影響を感じます。方法論だけでなく、中身まで影響されていたら、問題があるでしょう。
◆ キリスト教的トランスフォーメーション・プログラム
アメリカから日本に輸入された、キリスト教的トランスフォーメーション・プログラムで、代表的なのは、
リック・ウォレン『人生を導く5つの目的』パーパス・ドリブン・ジャパン、2004年 です。
これに添った『祈りの日記〜40日の心の旅』というワークブックが重要です。
- 作者: リックウォレン,Rick Warren,尾山清仁
- 出版社/メーカー: パーパスドリブンジャパン
- 発売日: 2004/06
- メディア: 単行本
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- 作者: リックウォレン,小坂直人,Rick Warren,尾山清仁
- 出版社/メーカー: パーパスドリブンジャパン
- 発売日: 2004/12/01
- メディア: 単行本
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私が重宝しているのは、
バーナ・バーキー『かけがえのないあなた』いのちのことば社、1983年 です。
ワークブックもあります。
これらのスタイルと方法論は、聖書の枠組みや伝統的なキリスト教教理の枠組みではなくて、現代人の思考の枠組みから聖書・キリスト教を読み込んでいくというものです。
神の「愛」を強調しますが、神の「怒り」や「裁き」については、あまり教えていません。人間の「弱さ」には注目しますが、人間の「罪」の扱いは不十分です。それが問題のあるところです。
その背景にあるのは、ヒルトナーの牧会カウンセリング論、マズローやロジャースの人間性心理学ではないでしょうか。
牧会カウンセリング―キリスト教カウンセリングの原理と実際 (1969年)
- 作者: S.ヒルトナー,西垣二一
- 出版社/メーカー: 日本基督教団出版局
- 発売日: 1969
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これらは、使う人と使い方とタイミングによっては、良薬となります。しかし、処方の仕方を間違えると毒にもなります。
次の本が参考になります。
ジョアンナ&アリスター・マグラス『自分を愛することのジレンマ』いのちのことば社、1996年
◆ 一般的なトランスフォーメーションの手法
一般(世俗)のトランスフォーメーションについて参考となる図書を紹介します。
上田紀行『トランスフォーメーション・ワークブック(20日間で自分を変える自己創造メソッド)』JICC出版局、1991年
トランスフォーメーション・ワークブック―20日間で自分を変える自己改造メソッド (別冊宝島 (140号))
- 作者: 上田紀行
- 出版社/メーカー: JICC出版局
- 発売日: 1991/09
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これは独習用のトランスフォーメーションの教科書です。これを読めば、具体的なトランスフォーメーションのプロセスがわかります。
星野欣生『人間関係づくりトレーニング』金子書房、2003年
これは指導者用のトランスフォーメーションの教科書です。南山大学はこの分野の研究に力を入れています。
柿田睦夫『自己啓発セミナー(「こころの商品化」の最前線)』新日本出版社(新書)、1999年
自己啓発セミナー―「こころの商品化」の最前線 (新日本新書)
- 作者: 柿田睦夫
- 出版社/メーカー: 新日本出版社
- 発売日: 1999/03/01
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これはニューエイジ系の自己啓発セミナーの実態をレポートした本です。
諸富祥彦『トランスパーソナル心理学入門』講談社現代新書、1999年
これはニューエイジ的なトランスフォーメーションの解説をしています。
◆ カルトのトランスフォーメーション(マインドコントロール)
カルトが行っているトランスフォーメーションは、組織の意のままに動く奴隷を造る、マインドコントロールです。それは基本的人権を侵害する犯罪的な行為です。この問題について参考となる図書を以下に紹介します。
現代のエスプリ『カルトー心理臨床の視点から』至文堂、2008年
『洗脳されたい!(マインドビジネスの天国と地獄)』宝島社、1997年
洗脳されたい!―マインド・ビジネスの天国と地獄 (別冊宝島 (304))
- 出版社/メーカー: 宝島社
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スティーブ・ハッサン『マインド・コントロールの恐怖』恒友出版、1993年
- 作者: スティーヴンハッサン,Steven Hassan,浅見定雄
- 出版社/メーカー: 恒友出版
- 発売日: 1993/04
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浅見定雄『なぜカルト宗教は生まれるのか』日本基督教団出版局、1997年
マインド・コントロール研究所『カルトで傷ついたあなたへ』いのちのことば社、1999年
カルトで傷ついたあなたへ―カウンセリングとリハビリテーション
- 作者: マインド・コントロール研究所
- 出版社/メーカー: いのちのことば社
- 発売日: 1999/09
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日本ルーテル神学大学教職神学セミナー『「神々」の時代を問う(キリスト教と新々宗教)』キリスト教視聴覚センター、1994年
日本イエス・キリスト教団カルト対策委員会『異端・カルト ハンドブック』ベラカ出版、2010年
尾形守『ニューエイジ・ムーブメントの危険』プレイズ出版、1996年
水草修治『教会をむしばむニューエイジの罠(増補改訂版)』CLC出版、1995年
ニューエイジ系やカルトのトランスフォーメーション・セミナーは、いわば「疑似福音」です。カルトで傷ついた人は、本物の「福音」によって、リハビリテーションを行うと良いでしょう。
◆要注意!!
トランスフォーメーションを求めている人は世の中に大勢おられ、そういう人たちをマインドコントロールするのは、案外、容易なことなのかもしれません。だから、カルト問題が続出するのでしょう。
決して、そういう行為を是認するのではなく、むしろ強く反対するがゆえに、私はこういった研究を続けています。
上に参考文献を載せましたが、実は、これは人間の精神や心理の構造をある程度、理解すれば、誰でもできてしまうのかもしれません。だから、とても危険なわけです。
それゆえ、精神医学者や心理学者、宗教家には厳しい倫理が求められる。それは当然です。
我々キリスト教の伝道者・牧師も、現代社会では、伝道・牧会にカウンセリングが必須とされています。人間心理を学ぶことは重要なのですが、信徒を増やしたいとか、教会の活動を活性化したい、といった目的で心理学的な操作を行うことは、厳に慎むべきだと思います。実際、そういう事例があり、誘惑があるように感じます。
我々伝道者・牧師はあくまで、おひとりおひとりの健全な信仰と生活と幸福のために、み言葉と祈りによって、謙遜に仕えるものでなければならない。
これは自戒であります。